菊地凛子主演「バベル」のネタバレを [映画]

この映画は、菊地凛子というあまり誰も知らない女優がアカデミー賞ノミネートということで日本では評判になりました。
バベル、というのは、バベルの塔ですね。全くことばが通じない状態が出現して、神がこの塔を破壊したという。
この設定で映画がつくられていますけど、映画の外までバベルがしみだしていますので、ネタバレ話をしてみます。

この映画は、配役でまず設定を見誤るように考えられています。

ブラッド・ピットがケイト・ブランシェットと共演していたら、誰が見たってこの二人が主役です。
夫婦仲にヒビが入っている二人が、片方が命にかかわる大けがをしたことでつながりをとりもどすのだ、と見えます。

それはまあその通りなんですけど、本筋ではない。
最初から最後までこの二人で引っ張るわけではありません。

妻が銃弾をくらった射撃主は、ジャッカル退治用の猟師用のもので、子供が粋がって観光バスを撃ったのです。
この少年役はあまり有名な俳優でもないけど、彼の倫理的な悩みがあぶりだされるのか、と思います。

それもあるのですけど、本筋ではない。
善悪を語られることもありません。

その銃がどこから来たかという話がどうも核心らしいと観客は思い始める、という流れが作られています。
それが日本人の観光客から、という噂が出てくる。

いきなり日本が舞台となり、耳に障害のある女の子が出現します。銃撃事件と何の関係もないように出現します。
この子が菊池凛子で、この役でアカデミー助演女優賞のノミネートになったのですが、役柄が特殊で行動が異常。
これを若いみそらで演じた度胸は大したものです。

自分の性的なものを制御できず、歯医者に局部を触らせようとしたりして怒鳴られ嫌がられる。
パンツ履かないで人に見せまわる。
しかしそういう行動をすると注目されることを知っていて変なことを次々にします。

なぜそんなことをするのか、が最初はわからないけど、段々わかってくる。
母が死んだという嫌な体験を現場で知っている。それは何だったかというのを本人は目撃して知っている。
それを別の思い出にすりかえようとしているのです。人に言う場合、そのすり替えた思い出を主張する。

刑事がそのことを調べています。
ストーリーとは別にちょっと日本人は感想を持ちますが、どこの国の警察だろうと思うくらい無神経で無様な警官です。
南米のどこかの警察じゃないかと思ったくらい。

疑っているのは夫が妻を殺したのではないかということです。
しかし、娘に訊くと、発見時の遺体状況と違うことを主張する。
ここで、観客は、父親が一番おかしい怪しい存在だと気が付きます。
父親とは役所広司が演じている、出番の少ない役です。

警察は思い切り無能なので、問題を絞り出し詰めることができない。

観客は知っているのです。この男がモロッコで遊牧民族に銃を売り渡した当人であることを。
しかし、映画の登場人物は当人以外は誰もそれを知らない。
というか、モロッコでブラッド・ピット夫妻が受難したことも知らない。
遊牧民族の少年がバスを撃ったことも知らない。

いろいろあって、ケイト・ブランシェットは命を取りとめ、夫婦は無事に帰国可能になり、障害者の娘がマンションの窓で全裸になって物思いにふけっているところに父親が衣服をかけて外を見るところでラストシーンになります。
一番の悪人であったことが観客は知っているけど、優しく慈愛に満ちた父親像、で終わるのです。

別々のストーリーが、全くまじりあわないで同時に進行していくということで「バベル」なんですね。

これ、菊地凛子の演技に、実際の聴覚障碍者の団体が反発して(ま、当たりまえでしょうね)、聴覚不自由者が皆あんなもんだと思うな、と言いました。
アカデミー賞がとれなかったときに大拍手したそうです。

健常者が軽々しく障害者の真似をしたりするな、という主張は正しいでしょうね。
足を怪我した人のまねをした歩き方をしただけで侮辱は成立しますから。

それ自体が「バベル」というテーマになっています。

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