ブラタモリ 2015新作レギュラーの真価について [品性]

ブラタモリが2015年に帰ってくるのが楽しみでたまりません。

この番組、飛びぬけているのです。
なぜかというとタモリです。

人気者の芸人が仕切っている番組というレベルを超えています。
日本語が美しいNHKアナウンサーがきれいにまとめているお手本的な番組では全然ありません。

NHKが作っている番組は、従来はきっちりした脚本があって、ぴったりそれに従った演出がなされたものでした。
それに、美しい日本語アナウンサーが語りをつけて、見事に「日本賞」を受けられるものが多かった。

特にローカル系の取材ものは、新日本紀行だとか小さな旅、とか、きれいに作り上げられたものでした。

ブラタモリは、一応コンテはあってそれに従ってカメラが移動していると思われますが、おそらく台本にないものが展開しています。
それはタモリの、言ってみればアドリブです。

九州人のくせに、東京の市中を江戸っ子でも知らないくらいに熟知しており、地形や歴史についての話題は、専門の研究者でないと対応できないレベルです。
専門家をゲストとして参加してもらったりしていますが、妥当なツッコミや質問をしています。

徳川綱吉の犬公方としての犬事業をはっきり教えてもらったのは初めてです。
中野サンプラザとそれがつながるという話題であっと驚き続けました。

江戸の水路の構造と徳川家康の心持ちを論じた話も聞いたことがありません。

渋谷が本当に谷であることを了解させる説明も、誰にもしてもらったことがありません。

古老の話を聞くように、くっついていていつまでも話をしてほしいと思わせる中毒的なものでした。

新大久保付近の、百人町あたりの話はとてもNHK的ではなかった。
ここは徳川の鉄砲部隊が百人常駐して住んでいた街で、今はラブホテルが林立したりしている。
タモリが若い時にラブホテルに居続けた話がでてきて、どういう鉄砲を撃っていたか、という話題になるので。

2015年に相棒が誰になるかわかりませんが、前は久保田アナウンサーという、今ニュースの時間にときどき出てくる痩せた女性でした。
これがボケた存在で、たくんでいるわけでもないのにおかしい行動をし、モノを知らない大馬鹿もんの役を喜んでやっていました。
テレ朝に応募して不採用になってNHKに来たと、まるで落第したように言うのもおかしい。
昔の広瀬さんだとか山根さんだとかいう女性アナウンサーにはあり得ない言動で、NHKのアナウンサーだったらカシコのはずだという思い込みも破りました。

タモリはこの相棒にあえて愚か者役をふって行動せず、ごく普通の、敬意をたもつべき女性として扱っています。
おかげで、視聴者としては、ああまたバカが来たという気持ちにはならないで済む。

仕事現場で皆がこれをやっていればブラック騒ぎなんておきないと思います。

このバランス感覚は特記していいことでしょう。

ときに、タモリをどういう人間だとおもっているか、が世代によって違うようで、それが最近フジテレビで始まった「ヨルタモリ」の評価で二つに分かれるようです。

この番組は、ある地方のある特定の職業の人に扮したタモリがバーの客としてやってきてそれなりの癖で話をする、その中座した時間につけたテレビでタモリが例の密室芸をする作りになっています。

この密室芸こそがタモリの価値なんですけど、いいともしか知らない世代には、受けない変な芸をしているとしか見えないのですね。
そのひとたちはツイッターなんかで否定また否定、になっている。
ただ、よく見て意味を考えて言っているのではなく、拒否反応で言っているだけのようで、いわば食わず嫌いで、子供が初めてゴーヤを食べさせられたようにかんじるのでしょう。

ときに、ヨルタモリのテレビで演じられる密室芸はこういうものです。

日本語不明瞭な大学教授が得体のしれない変態的和歌を無表情に延々と説明する。

プロフェッショナルのプレイヤーの中に入り込んであらゆる種類の音楽を変な歌詞で歌う。音楽的にはぴったりあっている。

本物のサルとコントをして、サルに本気で怒られて敵視され、なだめる。
これはどう考えてもアドリブで発生した事故なのだけど、平気でコントを続ける。

こんなことができる芸人がほかにいるかよく考えてみる図抜けていることがわかるのですけど。

バーの客に扮しているときのタモリも相当なもので、大阪の工務店の社長役のときは電車旅の醍醐味、人の知らない穴場を熱心に語ります。
岩手の喫茶店の店長をやっているときにはジャズはジャンルでなくノリの世界だ、プロの音楽家でもジャジーじゃないことがある、というようなことを真剣に論じます。

この守備範囲の無茶苦茶な広さと、のめりこんでいるような深さは大変なものです。

こんな人と同時代に居られることの幸せを味わわないでいることはできません。
ブラタモリの2015年復活を本当に喜びます。

かつての回は東京とか江戸でしたけど、2015年は1月6日から、京都で始めるようですね。
いまからわくわくします。


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